【企業分析】第一三共(22卒就活生必見)【2021年更新】

国内企業

抗体薬物複合体(ADC)で勢いに乗る第一三共株式会社を企業分析・企業研究していきます。

 

株価推移歴史主要ニュースから第一三共を読み解いていきます!
就活で企業分析しているんだけど、わかりやすく教えて欲しい!

就活や転職をしている方向けに、実際に製薬企業で働いている研究者の視点から、わかりやすく解説していきたいと思います。

 

この記事でわかること
① 第一三共の企業としての価値 
② 第一三共の歴史
③ 第一三共の重点領域
④ 第一三共の最近のニュース

「企業の業績」と「株価」には密接な関係にあるため、今回は株価を用いて説明します。

就活生にとっては聞き慣れない単語もあるかもしれませんが、わかりやすく解説して行きます。

時価総額

第一三共の時価総額は7.75兆円です。(2021年1月8日時点)

国内の製薬企業では第2位です。

製薬企業の時価総額ランキングは下図にまとめました。(参考:Google Finance

 

そもそも時価総額って何?

簡単に言うと、その企業を買収するのに必要な金額だよ!

時価総額とは?
企業価値の指標の一つです。
簡単に言うと、その企業を買収するのに必要な金額です。
(実際には、買収額=時価総額となることはほとんどありません)
時価総額には、現在の業績だけでなく、将来の成長も織り込まれていると言われています。
つまり、「時価総額の大きい企業」は、「現在の業績が良く」さらには「将来的な成長の期待が大きい」と言えます。
*「時価総額」=「株価」×「全世界の株の数」

 

歴史

初期

2005年に、三共と第一製薬が経営統合して誕生しました。

三共は、1899年創業です。

特に、高脂血症治療薬メバロチンは、90年代後半から05年にかけて世界の売上トップ10の常連でした。

第一製薬は、1915年創業で、抗プラスミン剤などで知られていました。

 

近年

株価の推移を参考に近年の歴史を振り返っていきます。

失われた10年

第一三共の歴史を見ると、決して順風満帆ではなかったことがわかります。

失われた10年」と呼ばれていた通り、

生活習慣病治療薬など大型薬の特許が次々と切れる中、大型新薬を生み出せないままでした。
 

さらに、拡大する後発品事業進出を目論んで、2008年に約5000億円もの大金を投じて進めた

インド後発薬大手のランバクシー・ラボラトリーズの買収は失敗に終わったと言われています。

買収直後にランバクシーの工場で品質問題が相次ぎ、FDAから禁輸措置を受けていました。

2014年に同社を売却しました。(参考:日本経済新聞)

 

この失敗を契機に、第一三共は「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を目指す2025年ビジョンを打ち出し、

がん領域の新薬開発に注力する体制に方向転換しました。

ここまでを見ると、第一三共はボロボロだね。。。

これから第一三共の逆襲が始まるよ!

ADCによる逆襲

そもそもADCって何?

ADC(抗体薬物複合体)とは、抗体」に「薬物(従来の低分子抗がん剤)」を結合させた新しい薬剤だよ。

「抗体の強み(がん細胞を狙い撃ちにできる)」と「薬物の強み(薬効が高い)」による相乗効果が期待されている次世代の薬なんだ!

2019年3月、第一三共は、開発中のADCについて製薬大手アストラゼネカと共同開発することを発表しました。

第一三共はその見返りとして、一時金1500億円を受け取りました。

さらに、開発が順調に進むごとに最大で7600億円を受け取ります。(参考:日本経済新聞)

一つの薬だけでこの値段なのだから、この薬に対する期待の高さがうかがえるね!

ピーク時の売上は年間5000億円と言われており、この締結日の株価は大暴騰しました。

その後も、三種類のADCが順調に開発されており、株価もそれにつられて鰻上りです。

出典:第一三共

また、ADCは「三共が得意としていた抗体」と「第一製薬が得意としていた薬物」の技術を組み合わせて開発されたもので、

ここへきて統合の成果が実を結びました。

第一三共のADCの特徴
① 一つのADCにたくさんの薬物を搭載できる
② 抗体と薬物の結合が安定している
③ がん細胞内で効果的に薬物を放出して薬効を示す(副作用が少ない)
④ 薬物の薬効が強力
⑤ ADCががん細胞に取り込まれた後、薬物が細胞外に漏れ出し周囲のがん細胞も攻撃する(バイスタンダー効果)
(参考:第一三共)
 

現状

第一三共の現状を、「重点領域」「最近のニュース」から読み解いていきたいと思います。

重点領域

第一三共は「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を目指す2025年ビジョンを掲げています。

私たちは“がん”を研究開発の重点領域と定めており、がん領域のADCをはじめとするバイオロジクスや低分子化合物に関する研究機能、トランスレーショナル研究開発機能、そして臨床開発機能が密接に連携し、相互の専門機能が補完し合うことによる高いサイエンス力と実行力を実現する組織体制を整えています。

引用:第一三共

第一三共は長らく、医療用医薬品の他にも、一般薬、後発薬、ワクチンなど幅広い事業展開をしてきましたが、

ここ最近は、がん領域へ開発を急シフトしています。

 

ポジティブなニュース

ADCで1兆円超の評価

2019年3月にADC「エンハーツ」で英製薬大手アストラゼネカと提携しましたが、

続けて、2020年7月には、別のADC「DS-1062」で同様の提携をしたことを発表しました。(参考:第一三共)

前者は、最大で7600億円、後者は最大で6300億円の対価を受け取ります。

提携だけなのにすごい大金だ!

二つの薬を合わせて1兆円を超える評価を受けたことになるね!

エンハーツは、2020年に、日米で乳がんの治療薬として発売が開始されています。(参考:第一三共)

また、その他のがんへの適応拡大を目指した臨床試験も次々と進んでいます。

 

新型コロナのワクチン開発

第一三共の強みであるワクチンの領域では、

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンの開発が進んでいます。

2021年3月の臨床試験開始を目指して研究が進められており、大きな期待が寄せられています。(参考:第一三共)

新方コロナワクチンの種類について知りたい方は、下記の記事を参照下さい。
【ゼロからわかる】ワクチンの種類「現在開発中の新型コロナワクチンとは?」

 

ネガティブなニュース

株価の推移から見ても明らかな通り、ネガティブな要素はほとんどありません。

強いて言うのであれば、第一三共は、ADCの次の一手が欲しいところです。

実際に、第一三共は「beyond 2025」を打ち出し、既にニューモダリティへの挑戦を始めています。

引用:第一三共

医薬品には低分子や抗体などそれぞれ薬物分子の種類があり、総称して「モダリティ」と呼ばれています。科学の進歩に伴い、多彩なモダリティによってこれまで困難だった創薬標的にアプローチできるようになりました。私たちは低分子医薬品に次ぐ自社独自のモダリティとしてADC技術を創製してきました。そのほかにも様々なモダリティの研究に取り組んでおり、これまで有効な治療法がない疾患、既存の治療薬では十分な効果が得られない疾患の患者さんに対して、治療の可能性をひとつでも増やしていくことを目指して研究開発を進めています。

引用:第一三共

もう次なる一手を見据えているのですね!将来が楽しみです!

 

 

以上、第一三共について分析してみました!

この記事によって、皆さんが製薬企業に興味を持って、調べたり勉強したりするきっかけになれば嬉しいです!

 

参考文献

 

 

 

 

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