【ゼロからわかる】ワクチンの種類「現在開発中の新型コロナワクチンとは?」

💊製薬業界ニュース

AFPBB Newsによると、

「イギリスは、12/2、米製薬大手ファイザーと独製薬ベンチャーのビオンテックが開発したワクチンを世界で初めて承認した。」

と報じられた。(出典:AFPBB News)

世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルスワクチンが承認されたというニュースが世界中を駆け巡った。

このことにより、感染拡大を抑えることが期待されていますが、

「そもそもワクチンとは何なのか?」

「ワクチンにはどの様な種類があるのか?」

「ワクチンが承認された後の課題はないのか?」

といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

今回はわかりやすくワクチンについて解説したいと思います。

ワクチンとは?

ワクチン(独: Vakzin、英: vaccine)は、感染症の予防に用いる医薬品。病原体から作られた無毒化あるいは弱毒化された抗原を投与することで、体内の病原体に対する抗体産生を促し、感染症に対する免疫を獲得する。

引用:Wikipedia「ワクチン」

簡単にいうと、「ウイルスを安全な形に改良したもの」です。

ワクチンが体内に投与されると、体内に備わっている免疫の力でウイルスを攻撃する抗体を作ります。

この抗体が体内で作られることによって、実際に感染力をもったウイルスが体内に入ってきても直ちに撃退できます。

免疫の仕組みについては、下記の記事を参照ください。

【初心者向け】免疫の仕組み

ワクチンの種類

ワクチンを作るときに使う技術によって、大きく二つに分けられます。

従来の技術を使ったワクチン

ウイルス粒子を改造したり、ウイルス粒子の一部を合成したものです。

メリットは、「インフルエンザワクチンなどで実用化されており、実績が十分にある」ことです。

デメリットは、「開発に時間がかかる」ことです。

製造時にウイルス増殖の手間がかかるため、時間がかかってしまいます。

具体的には以下の3種類に分けられます。

弱毒化ワクチン(生ワクチン)

ウイルスの病原性(毒性)を弱めて作ったワクチンです。

メリットとしては、ウイルスをそのまま用いるので「強い免疫が期待できる」ことが挙げられます。

細胞内に侵入し、免疫を働かせて抗体を作るので、免疫系全体の様々な経路を活性化できます。

デメリットとしては、ウイルスをそのまま用いるので「副作用が起こりやすい」ことが挙げられます。

麻疹、おたふく風邪、風疹などで実用化されています。(参考:ワクチンネット「MRワクチン」)

不活性化ワクチン

ウイルスを殺して(感染や増殖する能力を失わせて)作ったワクチンです。

メリットとしては、ウイルスを殺しているため「弱毒化ワクチンと比べて副作用が少ない」ことが挙げられます。

デメリットとしては、「弱毒化ワクチンと比べて免疫が限定的で効果が弱い」ことが挙げられます。

殺したウイルスを用いているため、ウイルスは体内で増殖せず効果も短期間です。

インフルエンザワクチンなどで実用化されています。(参考:ワクチンネット「インフルエンザワクチン」)

新型コロナワクチン(不活性化ワクチン)開発中の製薬会社
KMバイオロジクス(日本)
バーラト・バイオテック(インド)

組み換えワクチン(組換えタンパク質ワクチン、ウイルス様粒子ワクチン)

ウイルスの一部(断片)を人工的に合成して作ったワクチンです。

メリットとしては、ウイルスの一部のみを用いているため「副作用が少ない」ことが挙げられます。

また、ウイルスそのものを扱わないため、扱いが簡単(感染の厳重な管理が不要)である。

デメリットとしては、ウイルスの一部に対する免疫しか作られないため、「得られる免疫が限定的である」ことが挙げられます。

新型コロナワクチン(組み換えワクチン)開発中の製薬会社
ノババックス(アメリカ)
サノフィー(フランス)
GSK(イギリス)
塩野義製薬(日本)

新しい技術を使ったワクチン

ウイルスの設計図であるDNAやRNAを用いたワクチンです。

この設計図を体内に投与して、ウイルスの一部を体内で作らせます。

メリットは、「開発がスピーディーである」ことです。

近年の技術革新(ウイルスの遺伝情報を素早く解読する技術、ウイルスの立体構造を詳細に分析する技術など)により、

ウイルスの遺伝情報が判明し次第すぐに、ワクチンの設計を行うことができ、開発がスピーディーになりました。

さらに、ウイルスが変位した場合でも、対応する新たな設計図を組み込むだけで対応することができます。

デメリットは、「実績がほとんどなく、有効性や安全性で不明点多い」ことです。

確立された手法がなく、手探りの状態です。

しかし、既に世界的な感染拡大(パンデミック)となっている新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためには、迅速なワクチンの開発が求められています。

そこで、開発がスピーディーな新しい手法を用いたワクチンが注目されています。

今回、承認されたワクチンもこの新しい手法を用いたタイプのワクチンです。

このタイプのワクチンは具体的に3つに分類されます。

DNAワクチン
引用:アンジェス株式会社「新型コロナウイルス感染症関連情報」

ウイルスの遺伝子を含むDNAを人工合成して作ったワクチンです。

具体的には、DNAをプラスミドに埋め込んだものです。

体内へ投与されたDNAワクチンは、RNAへと転写され、その情報を元にウイルスの一部が作られます。

メリットは、「RNAワクチンに比べて、安定である」ことです。

DNAは2本鎖のらせん構造を取るため、構造的に安定です。

デメリットとしては、「プラスミドは細胞の膜を通過しにくく、細胞の内部に送達されにくい」ことが挙げられます。

対策として、

「細胞に取り込まれやすいコーティング」をしたり、

「ワクチンを注射する際に周囲に電気を与え、細胞膜に微細な穴を開けてワクチンを入れる」

といった試みがなされています。

新型コロナワクチン(DNAワクチン)開発中の製薬会社
アンジェス(日本)
イノビオ(アメリカ)
 
RNAワクチン(mRNAワクチン)

RNAを用いたワクチンです。

具体的には、不安定な構造であるRNAを保護したり、細胞への取り込みを促進するために、

RNAを脂質ナノ粒子(脂質でできたカプセル)などに封入します。

投与されたRNAは、その情報をもとに体内でウイルスの一部が作られます。

メリットは、「DNAワクチンに比べて、強力な免疫を誘導する」ことです。

効果が大きいので、投与量も少なくすみます。

デメリットは、「RNAが構造的に不安定であるために、保管が難しい」ことです。

保管時には、マイナス80℃で保管する必要があったり、使用期限も1週間など短いものが多いです。

新型コロナワクチン(RNAワクチン)開発中の製薬会社
ファイザー(アメリカ)
モデルナ(アメリカ)
キュアバック(ドイツ)
第一三共(日本)
 
ベクターワクチン

ウイルスの遺伝子を含むDNAを、別のウイルスの殻(ベクター)に入れて作ったワクチンです。

体内へ投与されたDNAワクチンは、RNAへと転写され、その情報を元にウイルスの一部が作られます。

ベクターは、病原性がないものが選ばれ、運び屋として利用されます。

具体的には、アデノウイルスやレトロウイルスが用いられます。

 

今後の課題

通常、開発から承認を経て生産が始まるまでには10年単位の時間を要しますが、

一刻も早い実用化が求められている新型コロナワクチンは、急ピッチで開発が進められています。

そのため、ワクチンが承認され始めた今後も、様々な課題があります。

安全性の確保

「有効性と安全性が実証されなければ、承認申請や緊急使用許可申請を行わない」

9/8に、ワクチンの開発を進めている欧米の製薬会社9社が、共同で声明を発表しました。

参考:一般社団法人 日本生活習慣病予防協会

ワクチンは、通常の治療薬と異なり、一般の健康な人に投与されます。

そのため、安全性の確保が何よりも重要です。

製薬会社は、「ワクチン承認の判断は、【政治ではなく科学】によって下されるべきだ。」としています。

また、想定外の副作用も危惧されています。

具体的には、抗体依存性感染増強(ADE)が挙げられます。

「ワクチン接種により獲得した抗体によって、かえって、感染が悪化する」といった副作用です。

ワクチンの特性の見極め

ワクチンの特性には、下記の2種類あります。

・発症を予防するもの

・重症化を防ぐもの

感染症の発症の予防ではなく、重症化を予防するものになる可能性があります。

(例:インフルエンザワクチンは感染・発症を完全に予防するものではなく、主に重症化を予防するもの)

そのため、ワクチンだけに頼らない感染症対策が引続き重要となってきます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました