【研究者】企業と大学の違い【「製薬企業での研究」と「大学での研究」の違い】

研究生活

研究をしている理系の大学生・大学院生にとって、

企業における研究者大学(アカデミア)における研究者の違いが全然わからない方も多いのではないでしょうか?

研究職には興味があるけど、

「大学で研究を続ける」のか「企業の研究職に就職する」のか悩んでいる人に向けて、

製薬企業の研究者として働いている私が感じた違いを紹介したいと思います。

目的

アカデミアと企業の一番の違いは、「目的(ゴール)」です。

「目的」の違い
・企業:「薬を創出して利益に繋げること」
・大学:「学術の発展・真理の追求」

この目的が異なるため、大きな違いが生じます。

企業の目的は、「薬を創出して利益に繋げること」ですから、

利益を上げるために、製品化を目指しています。

製品という目に見える成果があるため、

創薬という長い挑戦のモチベーションになったり、製品化した時には達成感に繋がると思います。

対して、アカデミアの目的は学術の発展・真理の探究です。

真理を探究して、得られた新しい知見を社会に役立てます。

研究者の個人的な興味を深掘りできたり、

利益を考えなくても良いため、基礎的な研究にも取り組めたりする傾向があります。

関わる人

「関わる人」の違い
・大学:専門性の高い同じ分野の人
・企業:幅広い分野の人

大学では「専門性の高い同じ分野の人」と関わることが多いです。

真理の探究を目的としているため、同じ分野の高い専門性を有する人と一緒に研究を進めます。

大学でも共同研究などで、異なる分野の人と関わる機会あるが、

近い分野の人に限られることが多いです。

対して、企業では「幅広い分野の人」と関わることが多いです。

例えば、製薬企業の研究者では、

合成のプロフェッショナル、薬理のプロフェッショナル、動物実験のプロフェッショナルなど

様々な専門性を有するプロフェッショナルと協力しながら、一つの薬を製品化することを目指します

さらには、製品化を目指しているため、研究職以外にも

開発職、営業職、生産管理職、マーケティング職など

研究以外の人と連携しながら製品化を目指します。

時間

「時間」の違い
・大学:比較的自由が多い
・企業:期限が厳しい

大学では、「比較的、自由で時間の制限がありません」

真理を深く突き詰めることが目的であるため、ほとんど期限がなく、

自分の興味を持ったことに時間をかけて深掘りできたり、

今すぐの応用を目指していない分野でない研究であっても、

学術の発展のために、基礎的な研究にも時間をかけて取り組めることが多いです。

(実際には、研究費は研究者自身で獲得する必要があるため、応用を考えざるを得ない場面もあります)

それに対して、企業では「期限があります」

企業は、製品化が目的なわけですから、

製品化の時期から逆算して、計画が組まれます。

自分の部署だけ期限を延長することは許されません。

時には、コストやスピードなどの効率を重視して外注することも多いです。

企業では、全てを自分でするのではなく、

各分野のプロフェッショナルが担当分野において、決められた期限内で結果を出すことが求められています。

研究の成果物

「研究の成果物」の違い
・大学:論文や特許などで成果を公開できる
・企業:公開できる情報が限られる(特許が多い)

大学では、研究の成果物として「論文や学会発表などで成果を公開できる」ことが多いです。

論文を投稿することによって、世界中の人に公開でき、様々な人の役に立てるという実感を持てるでしょう。

それに対して、企業では「公開できる情報が限られる」ことが多いです。

論文よりも特許が多い傾向にあります。

これは、商品化を目指している企業では、

特許取得により他社に対する優先権を確保することが重要なので、

論文で情報を無制限に公開するわけにはいかないためです。

一方で、製品というわかりやすい成果物で世の中に貢献できるといったこともあります。

給与

一概には言えませんが、給与に関してはアカデミアは企業よりも低い傾向にあります。

大学院生は学生であるため、給与をもらえるどころか、授業料を支払う立場にあります。

さらに、博士号を取得したあとに就くポスドクの年収は、およそ300万円ほどと言われています。

年齢を考えると決して高い数字とは言えません。

一方で、製薬企業では、初任給でも、

修士卒業で約26万円、博士卒業で約30万円となっており、

さらに、住宅手当や家族手当などの福利厚生も充実しています。

まとめ

これまで、アカデミアと企業の違い、メリットデメリットについて述べてきましたが、

どれも、どちらが良くてどちらが悪いと断定できるものではありません

さらには、企業にいながら大学に通って博士号を取得したり、

大学にいながらベンチャーを立ち上げて、様々な企業と共同研究を行ったりと

大学と企業の境界も曖昧になってきています。

さらには、基礎研究と応用を結びつける「両者の架け橋」となる存在も重要になると思います。

どちらが良いと決めつけるのではく、様々な人の意見を聞いて自分に合った選択をして欲しいと思います。

さらには、人生に正解なんてないのですから、色々なことに挑戦して欲しいと思います。

参考文献

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