時価総額第1位、日本で最も勢いのある製薬企業である
中外製薬株式会社を企業分析・企業研究していきます。

株価推移・歴史・主要ニュースから中外製薬を読み解いていきます!

就活で企業分析しているんだけど、わかりやすく教えて欲しい!

就活や転職をしている方向けに、実際に製薬企業で働いている研究者の視点から、わかりやすく解説していきたいと思います。
「企業の業績」と「株価」には密接な関係にあるため、今回は株価を用いて説明します。
就活生にとっては聞き慣れない単語もあるかもしれませんが、わかりやすく解説して行きます。
時価総額
中外製薬の時価総額は9.29兆円です。(2021年1月8日時点)
国内の製薬企業では第1位です。
製薬企業の時価総額ランキングは下図にまとめました。(参考:Google Finance)


そもそも時価総額って何?

簡単に言うと、その企業を買収するのに必要な金額だよ!
歴史
初期
創業は1925年です。
戦後、大衆薬市場で急成長しましたが、医療用医薬品へと事業を方向転換しました。(参考:中外製薬)
(現在、OTC事業はライオンに譲渡されています。(参考:日刊薬業))

新薬の開発に注力し始めたんだね!

この新薬集中の戦略が、現在の自社創薬の成果に繋がっているんだね!
次は、株価の推移を参考に近年の歴史を振り返っていくよ!
近年
株価の推移を参考に近年の歴史を振り返っていきます。

世界最先端のバイオテクノロジー技術
1980年代に米バイオ企業と共同研究を開始するなどして、バイオテクノロジー創薬へと方向転換しました。(参考:中外製薬)

今から40年も前にもうバイオに着手していたんだね!

先見の明があるね!
当時は低分子薬が主流で、タンパク質が薬になんかならないとさえ思われていたんだよ
分子を狙い撃ちできる抗体医薬にチャレンジしたんだね!

そもそも抗体って何?

抗原(異物)にくっつくタンパク質だよ!
2005年、国産初の抗体医薬「アクテムラ」の発売を皮切りに、
様々な抗体医薬品や、世界最先端の抗体エンジニアリング技術を開発しました。(参考:中外製薬)
① リサイクリング抗体技術(2010年発表、2020年製品発売)
② バイスペシフィック抗体技術(2018年製品発売)
③ スイッチ抗体技術(2019年発表)

3つの抗体技術を順にわかりやすく解説します!
一つ目は「リサイクリング抗体技術」です。
通常の抗体は、一度しか抗原に結合できませんが、
リサイクリング抗体はこの限界を打破し、抗原に何度でも結合できるようになりました。
さらに「スイーピング抗体技術」により多くの抗原を除去できるようになりました。
この技術は「エンスプリング」という薬に適応されています。

↓ 「リサイクリング抗体」ってこんなイメージかな?!


面白い例えだね!
抗原を「ゴミ」に例えたんだね!
二つ目は「バイスペシフィック抗体技術」です。
通常の抗体は1種類の抗原にしか結合できないですが、
バイスペシフィック抗体はこの限界を打破し、2種類の抗原(または一つの抗原の異なる部位)に結合できるようになりました。
この技術は「ヘムライブラ」という血友病治療薬に活用されています。

↓ こんなイメージだ!


いい例えだね!
その他にも、バイスペシフィック抗体は
・一つの抗原の異なる部位に結合する
・2種類の抗原を近づける
など薬効を高める無限のポテンシャルを持っているよ
三つ目は、「スイッチ抗体」です。
通常の抗体は、体内の疾患部位以外でも抗原に結合して薬効を示してしまい、副作用につながっていました。
スイッチ抗体はこの限界を打破し、特定の場所でスイッチを押されたように効果を発揮できるようになりました。

↓ こんなイメージだよね!


スイッチ抗体はとても優秀なマシーンのようだね!
副作用が大きくて狙うことができなかった標的も狙うことができて、治療の可能性が格段に上がると言われているよ!
ロシュとの「戦略的アライアンス」
もう一つ、中外製薬の近年を語る上で外せないのがロシュとの提携です。
2002年、戦略的アライアンスによって、中外製薬はロシュ・グループの傘下に入りました。
中外製薬は、ロシュに株式の過半数を握らせておきながら、経営と独立は維持しているという珍しい存在です。

そもそもロシュってどんな会社なの?

スイスの製薬企業だよ!
売上が3年連続で世界No.1で、中外製薬の約10倍もあるよ!
2018年以降はロシュとの連携による成果も出始めており、株価も鰻登りです。
実際に、ここ10年間で、売上は2倍、営業利益は4倍になっています。(参考:中外製薬)
こうした、好調な業績の背景には、ロシュとの連携の恩恵があると言われています。
一つ目のメリットは「創薬に注力できる」ことです。
新薬を開発する際に膨大なお金がかかるのが、臨床試験です。
中外製薬は、この大金が必要な臨床試験をロシュと共同で行うため、
自社で負担する費用を抑えることができ、創薬に注力できる環境が整っています。
二つ目のメリットは「ロシュの製品を日本で販売できる」ことです。
世界トップ製薬企業であるロシュの製品を日本で独占的に販売でき、安定した収入が期待できます。
さらには、ロシュの販売網を活用して世界中に中外製薬の製品を展開できます。(参考:中外製薬)

ロシュとの提携はメリットが大きいね!

そうだね!好調な業績と将来への期待から、
株価もそれを織り込むように上がっているね!
現状

中外製薬の現状を、「重点領域」「最近のニュース」から読み解いていきたいと思います。
重点領域
中外製薬の製品は「がん」「骨・関節」「腎」の領域を中心に構成されていますが、
特定の疾患に限定しない技術ドリブンでの創薬に取り組んでいます。
研究対象とする疾患の領域をあらかじめ限定せず、卓越した技術で新薬開発に取り組む方針(技術ドリブン)が中外製薬の研究開発の大きな特徴のひとつです。
引用:中外製薬
創薬に応用可能な独自の技術を先に開発し、疾患の原因分子などを標的とする医薬品にその技術を適用する
引用:中外製薬
また、「バイオ」と「化学合成」の他にも「中分子」にも注力しています。
中外製薬は、世界トップレベルにある2つのモダリティに加え、「中分子」の技術基盤確立に取り組んでいます。新しい技術を確立することにより、いまだ治療法のない病気に対する全く新しいアプローチが可能となります。
引用:中外製薬
さらに、デジタル技術を活用した個別化医療への取り組みも加速しています。
中外製薬は薬学、生化学、バイオなどの研究開発力に、AI、RWD(Real World Data)など、デジタルの活用と高度化を組み合わせることで、創薬プロセスを革新する、また個別化医療をさらに高精度、高品質にしていくことをめざしています。
引用:中外製薬
ポジティブなニュース
欧米4社に抗体技術をライセンス
中外製薬は、2020年に欧米4社に、次々に抗体技術を貸与しています。
歴史の項でも述べたとおり、中外製薬は世界最先端の抗体技術を有しています。
これらの技術を他の製薬会社に貸与することで、ライセンス収入で確実に稼ぐモデルを構築しています。(参考:中外製薬、中外製薬、中外製薬)

実際に、中外製薬の技術が世界的にも認められているとういことですね!
新型コロナウイルス治療薬
国産初の抗体医薬品である「アクテムラ」は新型コロナ感染症の重症者の
過剰な免疫反応を抑制できると期待されています。
2021年1月8日には、英政府によって、新型コロナに有効と発表されました。(参考:日本経済新聞)
また、ロシュからは、「抗体カクテル療法」の日本での開発・販売権を取得しました。(参考:中外製薬)
ネガティブなニュース
ロシュからのプレッシャー
好調な株価からも見て取れるように、ネガティブな要素がほとんどありません。
しかし、油断できる状態ではないと思います。
実際、中外製薬はロシュに株式の過半数を握られています。
株主として期待することは、「利益をあげること」や「企業価値を高めること」です。
現在は業績が好調ですが、今後は成果を出せなくなると、
経営への干渉が強まり、現在の戦略的アライアンスが崩壊しかねません。

ロシュからのプレッシャー恐ろしいね。。。

プレッシャーをポジティブに捉えて、緊張感のある中でどんどん革新的な新薬を生み出しているのは流石です!
まとめ
中外製薬は、「抗体エンジニアリング技術」「ロシュとの戦略的アライアンス」により、
好調な業績を叩き出し、それが株価にも反映されています。
今後は、「第三の柱である中分子」や「デジタル技術を活用した個別化医療」にも期待が集まります。

以上、中外製薬について分析してみました!
この記事によって、皆さんが製薬企業に興味を持って、調べたり勉強したりするきっかけになれば嬉しいです!
参考文献
↓ 「アクテムラ」の開発ストーリーについても記載されています。とても読みやすく勉強になりました!
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