独創的なペプチドの創薬技術を活かして、近年、急成長を続けている東大発の創薬ベンチャー、
ペプチドリーム株式会社をシリーズで徹底分析します。
今回は、シリーズ②「次世代医薬品ペプチド」と「ペプチドリームの技術」です。




結論から言うと、注目されている理由は「ペプチドが次世代医薬品として注目されている」ことに加えて「ペプチドリームの技術が世界で唯一無二のもの」だからだよ!

「次世代医薬品ペプチド」と「ペプチドリームの技術」の相乗効果ってことか!

まずは、次世代医薬品ペプチドが誕生した経緯からひも解きます!
医薬品の分類(低分子、中分子、高分子)
医薬品は、分子の大きさによって3つに分類されます。
ペプチド医薬品は、中分子医薬品に分類されます。

それぞれメリット・デメリットがあるんだね!

昔は「低分子医薬品」が主流だったけど、最近は「高分子医薬品(バイオ医薬品)」もシェアを伸ばしているよ!
順を追って説明します!
創薬のトレンドの変化
上のグラフは、世界のバイオ医薬品市場の推移を示したものです。
低分子医薬品の時代(~2000年)
1990年代の医薬品市場の主流は、「低分子医薬品」でした。

何で低分子医薬品が主流だったの?

低分子は構造が単純だから、化学合成によって工場で「安く大量に」作れるからだよ!
高分子医薬品の時代(2000年~)
2000年代になると、バイオ医薬品(高分子医薬品)が急速に売上を伸ばしています。

高分子の急成長によって、創薬のトレンドが変化している!理由は?

低分子のデメリットを克服することができたからだよ!
低分子医薬品は、工場での化学合成により、大量に安く生産できるというメリットを持つ反面、
薬が狙った場所以外にも作用してしまい、副作用が多いというデメリットがありました。
この短所を克服したのが、近年のバイオテクノロジーの進化によって作れるようになった
「高分子医薬品」です。
抗体医薬品に代表される高分子医薬品は、狙った場所に正確に届いて高い効果を発揮します。

高分子医薬品にデメリットはないの?

細胞や微生物を利用して作るものが多く、コストが高いことがあるね。。。

低分子も高分子も、一長一短だね。。。
何か良い解決策はないのかな?

ここにきて、注目され始めたのが「中分子医薬品」だよ!
低分子と高分子の両方のメリットを兼ねそろえているんだ!
中分子医薬品の時代到来?(2020年~)
最近、第3の創薬手法として世界の製薬大手が研究開発を強化しているのが、
ペプチド医薬品に代表される「中分子医薬品」です。

そもそも、ペプチドって何?

ペプチドとは、アミノ酸が2つ以上つながった物質だよ!
ちなみに、アミノ酸が30個以上つながったものはタンパク質と呼ばれているよ!

実は、薬効が強く合成が簡単なペプチドは、昔から注目されていたんだよ!

昔は、何で薬にならなかったの?

ペプチド医薬品には2つの課題があったんだ!


具体的には、体内に入れた瞬間、酵素の働きにより分解されてしまい、薬効を示さなくなるという問題や、

細胞に入り込めずに、狙った場所へ届かないという問題があったんだ。。。

ペプチドは薬に使えないね。。。

ペプチドリームの技術によって、ようやく克服できるよ!
ペプチドリームの技術(特殊ペプチド)
ペプチドリームは、「ペプチドを輪状にする」という斬新なアイディアで、ペプチド医薬品の問題点を克服しました。

輪っかにすることで、分解されず、細胞に入り込めるペプチドを作ったんだね!

研究当初は「ペプチドなんか薬になるわけない」って揶揄されたけど、失敗を恐れず果敢にチャレンジしたことで、ペプチド創薬の道を切り開くことができたんだ!

ペプチドとドリームを掛け合わせた社名にも、その想いが込められているね!

次は、具体的な技術について解説するよ!
フレキシザイムとPDPS(ペプチドディスカバリー翻訳システム)
一つ目の技術は、東京大学の菅教授が開発した人工RNA触媒「フレキシザイム」です。
このフレキシザイムを用いることで、tRNAにたくさんの種類のアミノ酸を結合させることに成功しました。

そもそも、tRNAって何だっけ?

mRNAの配列で指定されたアミノ酸を運んでくるのが「tRNA」だよ!
このアミノ酸を使って、アミノ酸連結工場である「リボソーム」と呼ばれる場所で、ペプチドが組み立てられるんだ!

フレキシザイムによって、このtRNAに結合できるアミノ酸の種類が格段に増加したんだ!

これで、作れるペプチドの種類が増えたんだね!
さらに、PDPS(ペプチドディスカバリー翻訳システム)という、
細胞を使わずに、リボソームを介してペプチドの合成を行うシステムに、
このフレキシザイムを適応することで、いっきに1兆種類以上の特殊ペプチドを合成することができるようになりました。
この膨大な候補の中から、薬として最適なものを選ぶことができるのです。
環状化技術
特殊な環化技術を用いいることで、
ペプチドの両端を自発的に反応させて、環状の構造を作ることに成功しました。

この技術の何がすごいの?

ペプチドを輪っかにするのは、とても困難だったんだけど、「ペプチド両端の化学構造を工夫」することで、自動的に輪っかができるようになったんだ!

以上の技術を融合することによって、治療薬の候補となる特殊ペプチドを、一挙に膨大な種類作り出すことが可能になりました。

様々な技術の融合によって、唯一無二の革新的な技術が誕生したんだね!
まとめ
・医薬品は、大きさで分類すると3種類に分けられる
・「低分子」→「高分子(バイオ)」と創薬のトレンドが推移している
・ペプチドリームの技術によって、ペプチド創薬の道が切り開けた
・ペプチドリームの技術は、「フレキシザイムとPDPS」および「ペプチド環化技術」からなる

次回は「ペプチドリームの歴史と将来性」を徹底分析します!
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