【ペプチドリーム企業分析③】歴史・現状・将来性(企業研究2021年最新)

国内企業

独創的なペプチドの創薬技術を活かして、近年、急成長を続けている東大発の創薬ベンチャー、

ペプチドリーム株式会社をシリーズで徹底分析します。

今回は、シリーズ③「ペプチドリームの歴史・現状・将来性」です。

シリーズ②では、ペプチドリームの特殊ペプチドによって、中分子創薬の道が開けたことを見たね!
シリーズ③の今回は「ペプチドリームの歴史と将来性」について解説します!

ペプチドリームがどんな技術をもとに、どんなビジネスを展開しているのか、分かりやすく教えて!

結論から言うと、PDPSと呼ばれる唯一無二の「創薬プラットフォーム」を確立して、世界中の製薬企業の創薬に携わっているよ!

この記事でわかること
ペプチドリームの「歴史、技術、事業戦略、将来性、評判」

まずは、「ペプチドリームの歴史」からひも解きます!



ペプチドリームの歴史

創業

創業は2006年7月です。

東京大学の菅裕明教授が開発した技術をもとに、菅裕明氏と窪田規一氏が共同で、ペプチドリームを立ち上げました。

2人で立ち上げたんだね!

技術を開発した菅氏と、バイオベンチャー立ち上げの経験がある窪田氏が、手を組んだんだ!

この「技術と経営を分けたビジネス戦略」が成功の要因と言われているよ!

事業内容は、独自の創薬開発プラットフォームシステム「PDPS」を活用して「特殊ペプチド」による創薬研究開発を行うことです。

創業後に、2人は、PDPS(Peptide Discovery Platform System; ペプチドディスカバリー翻訳システム)を確立しました。

PDPSって何?

特殊ペプチドを自在に作るプラットフォーム(基盤技術)だよ!

PDPSは、主に3種類の技術から構成されます。

PDPSを構成する3つの技術
① フレキシザイム
② FITシステム(Flexible In-vitro Translation system)
③ RAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステム

PDPSがペプチドリームの中心の技術なんだね!

このPDPSと呼ばれるプラットフォームを作ったことで「ペプチド創薬のGAFA」とも評価されているよ!

すごいね!

GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)は誰もが知るデジタルプラットホームを作った企業だもんね!

それでは、PDPSの技術を開発された順に深掘りしていきます!

PDPSの技術

PDPSの主要な3つの技術を開発順に解説します。

PDPSを構成する3つの技術
① フレキシザイム
② FITシステム(Flexible In-vitro Translation system)
③ RAPID(RAndom Peptide Integrated Discovery)ディスプレイシステム
フレキシザイム

一つ目の技術「フレキシザイム」は、人工RNA触媒です。

ペプチドリーム創業前に、菅裕明教授が開発しました。

人工RNA触媒?

そう!ペプチドとtRNAの結合を手助けするよ!

フレキシザイムとは?

そもそも、ペプチドは「アミノ酸」と呼ばれるパーツからできているんだけど、

フレキシザイムを用いることで、たくさんの種類のアミノ酸をパーツとして使えるようになり、組み合わせの可能性を劇的に増やしました

使えるパーツの種類が、20種類から400種類以上にも増えたんだね!

作れるペプチドの種類が桁違いに増えて、創薬の可能性が大幅に上がりそうだね!

 

FITシステム

二つ目の技術「FITシステム」は、フレキシザイムの技術を実際に創薬に応用するために、創業後に開発した技術です。

FITシステムを用いることにより、膨大な種類の特殊ペプチドを1つの試験管内に創り出すことができるようになりました。

すごい!どうやって1本の試験管の中で、多様なペプチドを作るの?

通常、ペプチドは細胞の中でアミノ酸を組み立てることで作られるけど、

FITシステムでは、アミノ酸を組み立てるのに必要な材料だけを試験管に入れて、人工的にペプチドを作るんだ!

FITシステムとは?

さっき説明した「フレキシザイム」の他にも、「ペプチドのパーツとなるアミノ酸」、「設計図となるmRNA」、「アミノ酸を組み立てるリボソーム」、「組み立てるエネルギーとなるATP」など様々な物質が混ざっているよ!

一気に1兆種類以上もの特殊アミノ酸を作ることができるんだね!

 

RAPIDディスプレイシステム

3つ目の技術「RAPIDディスプレイシステム」は、PDPSの重要なラストピースとして創業3年目に完成しました。

RAPIDディスプレイシステムを用いることにより、膨大な種類の特殊ペプチドを効率的にスクリーニングできるようになりました。

効率的にスクリーニング?

そう!さっき作った1兆種類の特殊ペプチドの中から、薬の標的に結合する最適な特殊ペプチドを選び出すことができるよ!

③ RAPIDディスプレイシステムとは?

薬の標的に結合する特殊ペプチドを選んだ後、それを増やすことで、

標的に対して「高い結合力」と「高い特異性(その標的だけに結合する性質)」を兼ねそろえた特殊ペプチドを選び出すことができるんだ!

この3つの技術を融合したPDPSは最強だね!

続いて、このPDPSを活用したビジネスモデルを解説します!



ペプチドリームのビジネスモデル

ペプチドリームは、PDPSの技術を活用して、3本柱の事業戦略を構築しています。

事業戦略3本柱
① 創薬共同研究
② PDPSの非独占的ライセンス
③ 戦略的提携による自社パイプラインの拡充

これだけ見てもよくわからない。。。

ペプチドリームは、さっき説明したPDPSを活用して、’稼げる’磐石なビジネスモデルを構築しているよ!
順にわかりやすく説明します!

創薬共同研究

一つ目の事業戦略は、「PDPSを使って、提携した製薬企業とともに薬の候補となる物質を作る共同研究」です。

2010年に、米製薬大手のブリストル マイヤーズ スクイブと創薬共同研究を開始したのを皮切りに、2020年までに、20社にのぼる世界中の名だたるメガファーマと提携しました。

具体的には、どうやって稼いでいるの?

提携した時の「契約一時金」に加えて、開発が進んで目標を達成するたびに「マイルストーン収入」を得ることができるんだ!

PDPSの非独占的技術ライセンス

二つ目は、「契約した製薬企業に、PDPS技術を貸し出す技術ライセンス」です。

2013年に、米製薬大手のブリストル マイヤーズ スクイブとライセンス契約したのを皮切りに、
2020年までに、9社の製薬大手とPDPSの非独占的技術ライセンスを結びました。

具体的には、どうやって稼いでいるの?

このライセンスでも、契約時の「技術提供料」に加えて、開発が進むたびに「マイルストーン収入」を得ることができるよ!

通常のバイオベンチャーにとって、研究開発費だけが先行する最初の10年は「死の谷」と呼ばれているけど、
ペプチドリームは、PDPSを活用したビジネスモデルによって見事「死の谷」を切り抜けているよ!

 

戦略的提携による自社パイプラインの拡充

3つ目は、「製薬企業と共同で、’自社創薬品’を開発する」ことです。

2016年のJCRファーマとの提携を皮切りに、2020年までに13社と提携を結んでいます。

自社創薬も始めているんだ!

そうだね!

コストはかかるけど、利益を独り占めできて、開発の主導権を握れる自社創薬は、メリットが大きいね!

次は、ペプチドリームの今後の展望を解説します!



 

ペプチドリームの将来性

株価、暴落、暴騰、急落、急騰

2020年に2月の発表によると、ペプチドリームが今後注力する事業は主に2つです。

今後の注力領域
① PDC(Peptide Drug Conjugate)プログラムの更なる拡大
② 研究後期プログラムの臨床試験開始

わかりやすく順に説明します!

PDCプログラムの更なる拡大

ペプチドリームは、PDC(Peptide Drug Conjugate:ペプチド-薬物複合体)プログラムのさらなる拡大を目指すとしています。

そもそもPDCって何?

「特殊ペプチド」と「薬物」を結合させたものだよ!

PDCのメリットって何?

「特殊ペプチドの強み(特定の細胞や組織を狙い撃ちにできる)」と「薬物の強み(薬効が高い)」による相乗効果が期待されている次世代の薬なんだ!

特殊ペプチドを’運び屋’として使って、薬物を標的に確実に届けるってことだね!

PDCとは?

同じ発想で今、ADC(抗体と薬物の複合体)が注目されているよね!
ADCとは何が違うの?

PDCでは、抗体にはないペプチドの優位性(製造コストが低い、細胞内外の多様なターゲットを標的にできる)が活かせるよ!

 

特殊ペプチドに結合させる薬物には、様々な種類が試されているよ!

PDCの薬物になる様々な候補
① 細胞毒性を有する化合物(天然物等)
② 細胞・組織への選択性を求められている低分子化合物
③ 薬物を内包しているナノ粒子
④ 核酸医薬品(siRNA薬を含む)

これらの候補のように、薬物単体では毒性があって薬として使えないものでも、特殊ペプチドと結合させて標的に確実に届けることで、副作用を減らして画期的な薬になる可能性を秘めています

 

研究後期プログラムの臨床試験開始

研究が進んだプログラムに関して、続々と臨床試験の段階に入ることが予定されています。

さらに、2017年にペプチドリームは、ペプチド原薬の受託製造を行う会社として「ペプチドスター」を設立しました。(参考:ペプチドスター

ペプチドスター メリット デメリット

なんでペプチド原薬の受託製造会社をつくったの?

特殊ペプチドの量産化技術はまだ確立されていない現状なんだ。。
そこで、ペプチドの量産化技術を確立することでコストを抑えて、臨床試験や商用生産を促進するのが狙いだよ!

 

まとめ

・ペプチドリームは技術と経営を分けたビジネス戦略をとっている。

・PDPSは「フレキシザイム」「FITシステム」「RAPIDディスプレイシステム」の3つの技術によって構成されている。

事業戦略3本柱として「創薬共同研究」「PDPSの非独占的ライセンス」「戦略的提携による自社パイプラインの拡充」を掲げている。

今後の注力領域は「PDCプログラムの更なる拡大」「研究後期プログラムの臨床試験開始」としている。

ペプチドリームのPDPSを活用した新薬が開発されるのが楽しみですね!

関連記事

環状ペプチドを使った創薬には中外製薬も取り組んでいます。

下の記事もおすすめです!

コメント

タイトルとURLをコピーしました