【JCRファーマ】武田と’脳に届く薬’で提携(製薬ニュース解説 第34号)

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JCRファーマは、2021年9月30日に、「開発中のハンター症候群(ムコ多糖症2型)治療薬’JR-141’について、武田薬品工業と海外での共同開発・事業化に向けたライセンス契約を結んだ。」と発表しました。

(参考:JCRファーマ武田薬品工業

ニュースのポイント
・JCRファーマと武田薬品工業は「JR-141」で提携した
・JR-141は、酵素と抗体を融合した薬で’脳へ届ける’技術が採用されている
・従来は効果が期待できなかった中枢神経症状の改善が期待されている
・欧州医薬品庁(EMA)よりPRIME指定を受け、迅速な開発が期待されている

JCRファーマって、薬を「脳に届ける」技術を強みとしている製薬企業だよね?

そうだね!
今回、開発している薬にも使われているよ!

開発中の薬についてと、武田との提携内容について教えて!

製薬企業ではたらく研究者の視点から、順にわかりやすく解説していきます!



ハンター症候群(ムコ多糖症2型)治療薬

ハンター症候群とは?

ハンター症候群(ムコ多糖症2型)は、ムコ多糖症の一種です。

そもそも、ムコ多糖症って何?

酵素の働きが弱いことによって、「ムコ多糖」と呼ばれる物質が分解されずに細胞内にたまってしまい、様々な臓器に障害が出る病気だよ。。

ムコ多糖症の中でも、ハンター症候群はどんな病気なの?

「イズロン酸-2-スルファターゼ」と呼ばれる酵素の働きが弱いことによって、酵素が分解するはずのムコ多糖が溜まってしまう病気だね。。
脳内でムコ多糖が溜まって、認知機能障害が起こることも多いんだ。。。

現在は、どんな治療法が多いの?

不足している酵素を補充する酵素補充療法が一般的な治療法だよ!
だけど、血液脳関門と呼ばれる脳のバリア機能によって、脳に酵素が届かず、中枢神経の症状には無効だったんだ。。

中枢神経の症状にも効果がある治療薬が望まれているんだね!

ハンター症候群の特徴
・「イズロン酸-2-スルファターゼ」と呼ばれる酵素の働きが弱いことが原因
・「ムコ多糖」と呼ばれる物質が細胞内に溜まってしまう
・酵素補充療法が一般的な治療法だが、中枢神経の症状には無効

治療薬「JR-141」の特徴

今回JCRファーマが契約を結んだ「JR-141」は、「イズロン酸-2-スルファターゼ」と「抗トランスフェリン受容体抗体」を融合した薬剤です。

酵素と抗体が融合した薬なんだね!

そうそう!
「患者さんの体内で不足している酵素(イズロン酸-2-スルファターゼ)」と「脳へ届ける’運び屋’の抗体(抗トランスフェリン受容体抗体)」を組み合わせた薬だよ!

脳内で直接効くから、従来は効果が期待できなかった中枢神経症状の改善が期待できるよ!

日本では3月に承認されて、「イズカーゴ」という名で発売されているよ!

どんな技術が使われているの?

JCRファーマの技術を順に解説していきます!

 

JCRファーマの技術

ターゲティング

JCRファーマは、「J-Brain Cargo」と呼ばれる血液脳関門を通過する技術をもっています。

血液脳関門(BBB)とは?

そもそも、血液脳関門って何?

簡単に言うと「脳のバリア機能」のことだよ!

血液脳関門とは?

脳は重要な臓器だから、有害物質から守るために、血管側と脳側で異物が行き来できないようになっているんだ!

なるほど!

でも、薬を脳に届けたいときは、このBBBが厄介だね。。。

J-Brain Cargoとは?

具体的には、どんな技術なの?

脳が’鉄分を取り込む特性’を利用した技術だよ!

簡単に言うと、「J-Brain Cargo」の正体は’抗体’なんだ!

抗体?何に結合する抗体なの?

「トランスフェリン受容体」と呼ばれる鉄分を取り込む役割を担うタンパク質に結合するよ!

J-Brain Cargoとは?

トランスフェリン受容体に結合した「J-Brain Cargo」はそのまま脳に取り込まれるよ!

なるほど!斬新なアイディアだ!!

薬と「J-Brain Cargo」を結合させて、薬を鉄分にカモフラージュしたんだね!

この技術を使うことで、実際に血液脳関門を通過したことが確認できたよ!

 

提携の狙いと今後

武田薬品工業は、カナダや欧州などで独占的に事業化し、JCRファーマは、「契約一時金」や「開発と事業化の進捗などに応じた収入」や「売り上げに応じたロイヤルティー収入」を得としています。

提携の狙いは何なの?

武田薬品工業のカナダや欧州における、臨床試験から販売に至るまでの経験や知識を活かすことが狙いだね!
迅速にたくさんの患者さんに届けることを目指しているよ!

希少疾患や神経精神疾患を重点領域とする武田薬品工業と、想いを共有できたんだね!

JCRファーマの株価は前日比+12%となり、株式市場の評価も高まっています!

すごい!JCRファーマには期待が高まっているね!

10月18日には、欧州当局より PRIME指定を受けてさらに注目を集めているよ!

PRIME指定?

十分な治療法がない疾患に対して、医薬品の開発支援を強化する制度だよ!
PRIME指定を受けると製造販売承認申請時に迅速審査の対象になる可能性があるんだ!

世界中の患者さんにJCRファーマの技術を使った薬が届けられるようになることに期待だね!

そうだね!
希少疾患を中心に、革新的な技術を次々と開発しているJCRファーマには今後期待です!

 

まとめ

・JCRファーマと武田薬品工業は「JR-141」の共同研究・事業化で提携した。

・JR-141は、酵素(イズロン酸-2-スルファターゼ)と抗体(抗トランスフェリン受容体抗体)を融合した薬剤である。

・JCRファーマの血液脳関門通過技術が採用されている

・従来は効果が期待できなかった中枢神経症状の改善が期待されている

・欧州医薬品庁(EMA)よりPRIME指定を受け、迅速な開発が期待されている

 

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