【第一三共】2021年10月決算発表!好決算で上方修正 第一三共の将来性は?(製薬ニュース解説 第37号)

第一三共

第一三共は、2021年10月29日に、2021年第2四半期決算を公表し、「今年度の通期業績予想を上方修正し、売上高を9900億円から1兆300億円に、営業利益を700億円から920億円に引き上げた。」と発表しました。

(参考:第一三共

ニュースのポイント
・主力品が好調で、通期の業績予想を上方修正した
・株価は低調な状況が続いている
・「ADCの研究開発」や「次世代のモダリティ開発」に積極投資をしている

第一三共の勢いが止まらないね!

主力品が好調で、通期業績の上方修正を発表したよ!
抗体薬物複合体(ADC)を中心に積極的に研究開発を進めていて今後の売上増加も期待できるね!

第一三共の「好調な要因」と「今後の見通し」について教えて!

各企業の決算を分析することで、業界の将来性が見えてくるよ!

製薬企業ではたらく研究者の視点から、順にわかりやすく解説していきます!



2021年第2四半期決算

決算概要(絶好調!!)

2021年第2四半期決算を発表しました。(参考:第一三共

今期(4~9月) 前年同期比(4~9月) 修正後の通期予想(4~3月)
売上高 5300億円 +10.4% 1兆300億円
営業利益 847億円 +44.9% 920億円

大幅な増収増益だね!

主力品の売上が好調で、増収増益となったよ!

さらに、通期予想が上方修正されて、過去最高の1兆円超を予想しています!

・増収要素:抗がん剤「エンハーツ」(+144億円)
・減収要素:認知症治療薬「メマリー」( -110億円)

通期予想を上方修正

業績が期初想定を上回ったため、業績予想を上方修正しました。

通期予想を上方修正
・売上高 :9900億円→1兆300億円(+4%)
・営業利益:700億円→920億円(+31%)

上方修正した要因は何なの?

主な要因は、抗凝固剤「リクシアナ」などの主力品の売上が好調なことだね!

リクシアナって、どんな薬なの?

血液が固まる作用を阻害して、脳梗塞や心筋梗塞などを予防する薬だよ!

世界各国で売上シェアを伸ばしていて、今年度は1967億円の売上を予想しています!

 

株式市場の評価

2021年に入って、第一三共の株価は冴えない状況が続いていて、日経平均株価を大きくアンダーパフォームしています。

ADCの好調は織り込み済み?

好調な業績なのに、なんで!?
株式市場の評価は低い理由は何なの?

抗体薬物複合体(ADC)の好調は織り込み済みと言われているね。。
昨年度のアストラゼネカとの大型提携から一転して、好材料出尽くしで、株価は下落していると言われているよ。。

最近は、ADCの研究開発費や販売費が嵩んで、利益を圧迫している状況なんだ。。

なるほど!
でも今後、売上増加を見込むADCや他の新薬が開発されることに期待だね!

そうだね!
次は、第一三共が取り組んでいる「ADCの適応拡大」と「新たなモダリティへの挑戦」について解説していきます!

 

 

第一三共の将来性

第一三共は、2025年度にがん領域の売上6000億円以上を掲げ、主力として期待されるADCの研究開発を推進しています。

さらに、2030年度を見据えて、新たなモダリティへの挑戦を掲げています。

抗体薬物複合体(ADC)の最大化

ADCとは?

そもそもADCって何??

ADC(抗体薬物複合体)とは、「抗体」に「薬物(従来の低分子抗がん剤)」を結合させた近年注目されている薬剤だよ!

「抗体の強み(がん細胞を狙い撃ちにできる)」と「薬物の強み(薬効が高い)」による相乗効果が期待されている次世代の薬なんだ!

第一三共は、どんなADCの技術を持っているの?

抗体と薬物を結合する「リンカー」の技術に特徴があるよ!

ADCにおいては、「搭載薬物の選択肢が限られている」「搭載薬物数の限界」「リンカーの不安定性」などの課題があったけど、第一三共は独自の技術により、これらを克服しました!

第一三共のADCの特徴
① 一つのADCにたくさんの薬物を搭載できる
② 抗体と薬物の結合が安定している
③ がん細胞内で効果的に薬物を放出して薬効を示す(副作用が少ない)
④ 薬物の薬効が強力
⑤ ADCががん細胞に取り込まれた後、薬物が細胞外に漏れ出し周囲のがん細胞も攻撃する(バイスタンダー効果)
(参考:第一三共)

すごいね!実際にはどんなADCを開発しているの?

順に説明していくね!

3つのADC

第一三共では、3つのADCの最大化を中期経営計画の柱に掲げています。

3つのADC?

そう!3種類のADCの開発に注力しているよ!
エンハーツについては、すでに製品化されているね!

3ADCと適応疾患
・抗HER2 ADC「エンハーツ」:乳がん、胃がん、非小細胞肺がん、大腸がんなど
・抗TROP2 ADC「DS-1062」  :非小細胞肺がん、乳がんなど
・抗HER3 ADC「U3-1402」    :非小細胞肺がん、大腸がん、乳がんなど

3ADCには、どれも「デルクステカン」という薬物が用いられているよ!

エンハーツ

3ADCの中で、開発が最も進んでいるのは「エンハーツ」です。

エンハーツについては、これまでに米当局より、4つの「ブレークスルーセラピー(画期的治療薬)」の指定を受けました。

「エンハーツ」のブレークスルーセラピー指定
・2017年8月 :HER2陽性の再発・転移性の乳がん治療
・2020年5月 :HER2陽性の再発・転移性の胃がん治療
・2020年5月 :HER2遺伝子変異を有する転移性の非小細胞肺がん治療
・2021年9月 :HER2陽性の再発・転移性乳がんの二次治療以降

そもそもブレークスルーセラピーって何?

簡単に言うと、革新的な新薬候補のことだよ!

ブレークスルーセラピー指定を受けると、効率的な開発を進めるための助言を受けたり審査を迅速化したりすることが可能になるんだ!

なるほど!一つの薬で4つも指定を受けるのはすごい!

胃がんと乳がんでは、すでに製品化されていて、
今後は、幅広いがん種での製品化を目指しているよ!

 

3000億円の設備投資

第一三共は、ADCの生産設備として、2025年までに約3000億円の大型投資をすると発表しています。

具体的には、どんな設備投資をするの?

小名浜工場や館林工場を中心に、原薬や抗体や製剤の工場を増設するとしているよ!
また、海外の製造委託先の企業にも投資して、生産ラインを確保するとしているよ!

それにしても3000億円ってすごい大金だ!

ADCの生産には、高度な技術やノウハウが必要不可欠で、第一三共にはADCのグローバルリーダーとしての活躍が期待されているね!

 

新たなモダリティへの挑戦

持続的な成長のため、更なる成長の柱となる製品・モダリティを継続的に創出することを目指しています。

新たなモダリティへの挑戦
・核酸
・LNP-mRNA
・第二世代ADC、新コンセプトADC
・バイスペシフィック抗体
・次世代合成医薬品(ペプチドなど)
・遺伝子治療
・細胞治療
・デジタルソリューション

思ったよりたくさんチャレンジしている!

LNP-mRNAに関しては、コロナワクチンで研究開発が加速しているね!

第一三共のコロナワクチンの特徴は何なの?

受容体結合部位だけを標的にしているとこだね!
他のmRNAワクチンは、スパイクタンパク質を標的にしているんだ!

メリットはあるの?

mRNAが短くて済むから、効率的に脂質ナノ粒子(LNP)に封入できるとしているよ!

第二世代ADCにも取り組んでいるんだね!

「均一の構造をもつADC」や、「薬物放出を精密制御したADC」など次世代のADC開発も積極的に行われているよ!

ADCを中心に、次世代のモダリティが誕生するのが楽しみだ!

最近の成果として、「ウイルスを利用した がん治療薬の開発に成功した」ことは話題になったね!

今後も、第一三共の高度な独自技術によって、革新的な治療法が誕生することに期待です!

 

 

まとめ

・主力品が好調で、通期の業績予想を上方修正した。

・株価は低調な状況が続いている。

・「エンハーツを中心としたADCの研究開発」や「mRNAを中心とした次世代のモダリティ開発」に積極投資をしている。

 

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