アステラス製薬は、2021年10月29日に、2021年第2四半期決算を公表し、「今年度の通期営業利益予想を下方修正し、2270億円から2180億円に引き下げた。」と発表しました。
(参考:アステラス製薬)

アステラスは下方修正したんだね!

主力品が好調だったけど、開発品に進展がありその費用で、通期の業績予想を下方修正したんだ!
開発進展による下方修正だから、悲観する必要はないと言われているよ!

アステラスの「現状」と「今後の見通し」について教えて!

先日発表された決算から分析していきます!

製薬企業ではたらく研究者の視点から、順にわかりやすく解説していきます!
2021年第2四半期決算
決算概要
2021年第2四半期決算を発表しました。(参考:アステラス製薬)
今期(4~9月) | 前年同期比(4~9月) | 修正後の通期予想(4~3月) | |
売上高 | 6517億円 | +5.9% | 1兆300億円 |
営業利益 | 902億円 | +3.8% | 2180億円 |

増収増益なんだね!

主力品の売上が好調で、増収増益となったよ!
通期予想を下方修正

下方修正した要因は何なの?

「ゾルベツキシマブ」の膵臓腺がんの開発計画が進んだことで、費用が増えたことが要因としているよ!

一時的に減益だけど、開発が進んだ結果なので「ポジティブな下方修正である」という意見もあるよ!
株式市場の評価
2021年5月に、2025年度までの中期経営計画を発表して以来、株価は好調で、日経平均を大きくアウトパフォームしています。
製薬業界では珍しく好調!理由は?

他の製薬企業の株価は低調なのに、なんでアステラスだけ好調なの!?

投資家に将来の成長性を理解してもらえたことだと言われているよ!

2021年5月に発表した中期経営計画では、
2025年には時価総額7兆円(現在の約2倍)を目指す目標を掲げたよ!

かなり意欲的な目標だね!!

今回の決算発表では、想定通りの進捗であることが発表されたよ!

アステラスが自信を持っている将来性について教えて!

順にわかりやすく説明していきます!
アステラス製薬の将来性
アステラス製薬は、2025年に時価総額7兆円を目指す中期経営計画を発表しました。
・2025年度には、「イクスタンジ」および「重点戦略製品」の売上を1.2兆円以上
・2030年度には、現在開発初期にある「Focus Areaプロジェクト」の売上を5000億円以上
を目指すとする意欲的な目標を掲げました。

わかりやすい!
2025年度と2030年度を見据えて、それぞれ具体的な売上目標も掲げているんだね!

この野心的とも言える目標に対する進捗は、ここまで順調だよ!
順に説明していきます!
「イクスタンジ」と「重点戦略製品」〜2025年に1.2兆円以上が目標〜
イクスタンジ(XTANDI)とは?

そもそも「イクスタンジ」ってどんな薬なの?

イクスタンジは、前立腺がん治療剤だよ!
前立腺がんは、男性のがんで2番目に多く治療薬の開発が望まれていたんだ!

2012年に、転移性去勢抵抗性前立腺がん治療剤として米国で発売して以来、グローバルで売上を伸ばしているよ!
ファイザーとの共同開発で最大化を狙う
「より早期の前立腺がんへの適応拡大」と「更なる販売地域の拡大」を目指して、ファイザーと共同開発を進めています。

ピーク時には年間6000~7000億円の売上を想定しているよ!

1つの薬でそんなに稼いでいるんだ!

だけど、2027年ごろから特許が切れ始めて売上の急落が予想されているんだ。。

次の収益源が欲しいところだ!
重点戦略製品とは?
イクスタンジを含めて、合計7つのプロジェクトを「重点戦略製品」に定めて、優先的に開発を進めています。

具体的には、何が「重点戦略製品」なの?

以下の7製品だよ!
製品 | ピーク時売上 | 現状 | 疾患 | モダリティ |
XTANDI (エンザルタミド) |
6000~7000 | 年間売上 4584億円 |
前立腺がん | 低分子 |
fezolinetant | 3000~5000 | 臨床試験 第Ⅲ相 |
閉経に伴う 血管運動神経症状 |
低分子 |
PADCEV (エンホルツマブ ベドチン) |
3000~4000 | 年間売上 128億円 |
尿路上皮がん | 抗体薬物複合体 |
ゾスパタ (ギルテリチニブ) |
1000~2000 | 年間売上 238億円 |
急性骨髄性白血病 | 低分子 |
ゾルベツキシマブ | 1000~2000 | 臨床試験 第Ⅲ相 |
胃がん | 抗体 |
エベレンゾ (ロキサデュスタット) |
500~1000 | 年間売上 11億円 |
慢性腎臓病に伴う貧血 | 低分子 |
AT132 (resamirigene bilparvovec) |
500~1000 | 臨床試験 第Ⅱ相 |
X連鎖性 ミオチュブラーミオパチー |
遺伝子 |

現状は年間約5000億円の売上だけど、「2025年に1.2兆円以上」を目標に掲げています!

倍以上の成長だね!2025年度までに間に合うの?

今回の決算も予想通りの進捗だとしているよ!

実際に、前回の決算から新たに「PADCEF」と「エベレンゾ」が承認されています!

今後もこの「重点戦略製品」7つに注目だね!
「Focus Areaプロジェクト」〜2030年に5000億円以上が目標〜
2030年以降の中長期での成長を目指して、2018年から「Focus Areaプロジェクト」を開始しました。
「Focus Areaプロジェクト」とは?

そもそも、Focus Areaプロジェクトって何?

新しい研究開発のやり方だよ!
「バイオロジー」「モダリティー・テクノロジー」「疾患」を融合して、有望だと判断したら優先的に資源を投入するやり方だね!

今回の決算で進捗があったのはどれ?

「遺伝子治療」のプロジェクトだよ!
遺伝子治療薬 治験被験者が死亡

2021年9月14日に、開発中のXLMTM治療薬で被験者が死亡したことが発表されたんだ。。

臨床試験中に死亡例が出たんだね。。。
今後はどうするの?

米当局(FDA)から臨床試験の差し止め指示を受けていて、今後の方針について協議するとしているよ!

同時に、現在治療法がないX連鎖性ミオチュブラーミオパチーについて、複数のシナリオを検討し、安全な治療法の開発に注力するとしています!

アステラスにとっては正念場だね。。
次世代の技術によって、根本的な治療薬が誕生することに期待です!

その他にも、新たな研究組織への移行を開始したよ!
研究組織刷新 「バトンタッチ型」から「アジャイル型」へ
アステラス製薬は、8月6日に、「2021年10月1日より研究組織を変更する」と発表しました。

アジャイル型??

アジャイルは、素早いという意味で、
アステラス製薬は「個々の創薬チームが自律的に研究に取り組む」ことを目指しているよ!

どういうふうに変わったの?

今までは、一つの創薬プロジェクトをそれぞれの部署がバトンタッチ型で引き継いで研究を進めていたけど、
今回の刷新で、それぞれの組織が独自に研究を進めて、有望と判断されたら、優先的に資源が投下され、イノベーションが加速することが考えられるね!

画期的な新薬を創出するためにはイノベーションは必須だもんね!
アジャイル型組織は、変化の早い現代に適してそう!
「デジタルヘルス」で初の事業化
アステラス製薬は、7月16日に、「ホルタ解析装置用プログラム’マイホルターII’の提供を開始した」と発表しました。
マイホルターII は、ホルター型心電図検査のデータを人工知能(AI) を用いたアルゴリズムにより解析するプログラムであるとしています。

アステラスってデジタルヘルスもやってるの?

そうだよ!「Rx+事業」として、
’医薬品の枠を超えて、最先端の医療技術と異分野の先端技術を融合させる’というビジョンを打ち出しているよ!
(参考:アステラス製薬)

今回、事業化されたプログラムには、どんな技術が使われているの?

独自のAIを用いた解析アルゴリズムが使われているよ!
大量の心電図データを、高効率かつ高精度で自動解析することに成功したんだ!

製薬企業が、薬以外のサービスを提供する時代が来たんだね!

アップルウォッチを始めとした、デジタルヘルスの領域では、異分野の融合による開発競争が激化しているよ!

異分野融合による新技術開発は、見ていてワクワクする!
今後にも期待だね!
まとめ
・主力品が好調だったが、通期の業績予想を下方修正した。
・7つの「重点戦略製品」は想定通りの進捗で2025年には1.2兆円への成長を見込む。
・新しい研究体制を実施し、2030年を見据えた研究開発を推進している。
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