中外製薬は、2021年12月13日に、研究開発説明会を開催し、「中外製薬の研究方針、中分子創薬、抗体エンジニアリング技術」について説明されました。(参考:中外製薬)
中外製薬の「中分子創薬の最前線」をシリーズで解説していきます。
シリーズ④の今回は「中外製薬の進捗と今後」について説明していきます。

シリーズ③では、中外製薬の取り組みを見たね!

そうだね!
中分子に「薬らしさ」を付与することと、「環状ペプチド」のライブラリーを構築することに成功したよ!

実際に、中外製薬の研究開発はどのくらい進んでいるのかと、将来性について教えて!

製薬企業ではたらく研究者の視点から、順にわかりやすく解説していきます!
進捗

シリーズ③で見たように、中外製薬は下記の2つに成功しました!

試験管内に、およそ1兆種類のペプチドのライブラリーを構築したんだよね!

このライブラリーを使って、1年間に20標的以上の創薬を行なっているよ!

実際にどんな治療薬を開発しているの?

次に解説するね!
2021年10月 臨床試験 開始
中外製薬は、「2021年10月に、がん細胞の増殖などに関わるRASと呼ばれるタンパク質を阻害する環状ペプチドについて、臨床試験を開始した。」と発表しました。

がんの治療薬から始めたんだね!

がんは患者さんの命に直結するから、新しい技術を用いた新薬が求められているんだ!

そもそもRASって何?

がん細胞の増殖に関与している考えられているタンパク質のことだよ!
異常なRASタンパク質はがんの増殖を引き起こしてしまうんだ。。。

その上、RASは細胞内にいて、これまでは創薬が難しかったんだ。。

細胞内のターゲットに創薬可能な「環状ペプチド」の出番だね!!

そう!!
従来の抗体薬では狙うことができなかったんだ!
飲み薬として環状ペプチド薬の開発を進めているよ!

他にはどんなプロジェクトが進行中なの?

次に説明するね!
27のプロジェクトが進行中
中外製薬は、「中分子薬の開発について、すでに27のプロジェクトが進行中である。」と発表しました。

27もプロジェクトが進行中なんだ!!

さっき説明したRAS阻害薬の他にも、治療薬候補が開発されていて2~3年での臨床試験入りを目指すとしているよ!

大阪大学、東京大学、ロシュなど、外部との協働も積極的に進めているよ!

中外製薬の将来性が楽しみだね!
今後
中分子創薬を支える基盤技術

X線結晶構造って何に使うの?

‘治療薬’と’標的であるタンパク質’がどのように結合しているのかを調べるために使うよ!
どこの構造を変えたら活性が上がるかが分かるんだ!

クライオ電顕構造は??

これもX線結晶構造と同じで結合様式を見るものだよ!
結晶を取る必要がなく、試料を凍らせて観察できるというメリットもあるよ!

構造解析の基盤技術を強化しているんだね!

そうだね!
さらに、デジタル活用も進めようとしているよ!

AIを活用するの?!

そう!
構造解析の技術を使って取得したデータをもとにAIによる化合物の設計を行うよ!

ラボオートメーションって、研究を自動化するってこと?!

実験の中でも、単純な作業の繰り返しには、ロボットが使われているよ!

単純作業は、ロボットに任せて、研究者はより創造的なことに注力できるようになるんだね!!
新たな設備投資

Chugai Pharmabody Research??

シンガポールにある中外製薬の研究所で、1年間に20標的以上の創薬を行なっているよ!

横浜に新しい研究所ができるの?

富士御殿場研究所と鎌倉研究所を閉鎖して、中外ライフサイエンスパーク横浜(神奈川県横浜市)を新設する計画を発表しているよ!

幅広い分野の研究者が一堂に集まったり、デジタル化を強化することで、イノベーションが加速すると言われているよ!

生産設備も増やすの?

中分子医薬品の合成原薬製造棟建設として藤枝工場、
バイオ原薬製造棟建設として浮間工場にも投資をしているよ!

中外製薬は、2024年までに2500億円超の設備投資を行うと発表していて、今後に期待がかかっています!

中分子創薬に本気で取り組んでいて、今後が楽しみ!!
まとめ
・2021年10月に、中分子技術を用いた初の臨床試験を開始した
・がんを中心とした中分子創薬のプロジェクトが27個進行している
・構造解析技術やデジタル活用など基盤技術を強化している
・中分子創薬に関する設備投資を積極的に行っている
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